Call of Duty 2

Hill400

第二次大戦を舞台にしたFPSといえばこれ、というぐらい初代Call of Dutyは高い評価を受けた。その続編がこのゲームである。前作ほどのインパクトはないが、新たに導入された要素によって従来のFPSと違う味を出すことに成功していると言えるだろう。今年も第二次大戦FPSはCoD2で決まりなのではないか。

圧倒的な無力感

戦争をテーマにしたゲームにはいくつかのタイプがある。「プレイヤー自身の立場」と「プレイヤーの行動が戦争の行方を左右するか」という軸を作るとすれば、以下のような類型化ができるのではないか。

①プレイヤーが指揮官であり、戦争の行方を左右するゲーム
戦争ゲームの最も基本的なタイプ。近年ではEuropa Universalis, Hearts of Iron等の戦略SLGあたりが商業的に成功した。PanzersのようなRTSやTotal Warシリーズみたいなハイブリッドもこの範疇に入る。日本では信長の野望、天下統一、大戦略提督の決断などなど、KoeiとSystemsoftの新作が毎年のように発売されている。

②プレイヤーが指揮官であり、戦争の行方を左右しないゲーム
このタイプについては、Silent Stormなんかが典型例でしょう。あとはBrothers in Armsとか。プレイヤーが指揮するのは小規模な部隊なので、プレイヤーの行動に関わりなく戦争は展開する。RTSでも論理的には考えられるのだが、あまり面白くないだろうなあ。

③プレイヤーが一兵卒であり、戦争の行方を左右するゲーム
このタイプも論理的には考えられるが、まだ見たことないなあ。日本なら三国無双とか。まあMedal of Honorなんかはこれに若干近いのかもしれないが。

④プレイヤーが一兵卒であり、戦争の行方を左右しないゲーム
多くのFPSはこのタイプに属する。基本的には敵をなぎ倒して行けばいいのだが、味方はそれと関係なく敵と戦って勝ったり負けたりする。プレイヤーは上位の指揮官から指令を受けてミッションを遂行するものの、大して戦争の勝敗に影響がない。

この4つのタイプのうち、CoDは④の特色を強く持つゲームだった。とにかく味方も敵もたくさん出てくる。スクリプトが多用され、プレイヤーの行動と関係なく戦争が展開する。この圧倒的な無力感が作り出す独特の空気はCoD2にもちゃんと引き継がれている。典型的なパターンは、まずプレイヤーの舞台がある地点を攻撃して占拠して、その後に敵の反撃が始まり、負けそうになった所でBGMにオーケストラ音楽が静かに流れ始め、一定時間が経過した後に味方の戦車や飛行機の大舞台が救援にやってきて助かる、という流れだ。

撃たれても死なない、だから撃たれる

このゲームにはヘルスの概念が存在しない。撃たれて怪我をすると視界が赤くなり、一定時間を経過すると元に戻る。理屈の上ではHaloのシールドと同じなのだが、Demoの段階ではこの仕様の意味が分からず、評価に躊躇した面もあった。結果としてはゲームの雰囲気を大きく変えるものとなっている。なぜかというと、「撃たれても大丈夫」ということは「敵の弾の命中率が良かったとしてもゲームバランスが崩れない」ということであり、敵に撃たれるという体験をプレイヤーに味わわせる回数が増えているのだ。そう、戦争に行くと撃たれるんですよ。ここまでプレイヤーが敵に撃たれるゲームは初めてなのではないか。
よく考えると、これはなかなか大きい。CoDの数少ない欠点の一つは、あまりにもプレイヤーが安全だということだった。あれだけの銃弾が飛び交っているのに、しゃがんで移動している限りほとんど敵に撃たれることがなかったため、妙にリアリティが欠如していたのである。しかし、CoD2ではちゃんと敵の弾が当たる。戦場は危ない。CoD2はこの当たり前の事実を再認識させてくれるのだ。戦場が危ないからこそ人がたくさん死ぬわけだし、総力戦は残酷であって、だから市民は戦争に行きたがらず、民主国家は戦争をしない、というのが民主的平和論の論理構造だったはずだ*1

Hill400

アメリカ編の途中に出てくるHill400、明らかにBrothers in ArmsのHill30を意識してるなあ。部隊長はMacだし。でもみんなMacの言うことを聞かずに突撃しちゃうし。CoDでは、歴史に残る有名な戦場はあんまり出てこない。ついにOmaha Beach登場かと思いきや、その前日の小規模な上陸作戦だし。そんな中で、一番激しかったのはこのHill400だろう。攻撃⇒防衛⇒救援というサイクルがはっきりしているのと、味方がどんどん死んでいくのが戦闘に切迫感を与えている。負けていく戦闘の雰囲気がこんなものなのかはよく分からないのだが、(BIAと違って、ちゃんと味方に無線が通じてるし。)完成度は結構高かったと思う。

結論

初代CoDには及ばないけど、これはこれでいいゲームだと思う。ちょっと短いとは思うが。基本的には初代と同様に反戦色の強いゲームであり、かなり健全なデザインだと思う。

*1:しかし統計的には確かめられてないんですね、これが。現在の通説は民主国家同士は戦争をしにくい一方で民主国家と権威主義国家は戦争をしやすいというもの。